2011年9月29日木曜日

タイ巡検のつづき

 ブログを開けますと,毎度元気そうな部員の姿が目に飛び込んできて,その数の多さに隔世の感がします。私は,訳あって(?)すでに6年目を迎えていますが,その間には,クラブの運営に危機感を抱くような時期もありました。それでも,みんなの地道な日々の活動があり,現在にいたっています。
 この間には,自分の新しい目的を目指して,あるいは,不本意ながらも新しい道を選ばなければならなかった同志もいましたが,彼らが残してくれた業績を忘れることはありません。諸先輩方を含め,彼らの業績の上に,今,私たちができることは,これまでと同様の日々の活動しかないように思います。
 
 あれっ? なんでこんな固いこと書いてしもたんやろ?
そうではなく,タイ巡検の話です。
今回は,タイの農地と住宅の,配列の形状について紹介します。


図1.バンコク近郊の水系と農地
(加筆した白線は,図中に確認できた水系)
 図1は,伝統的と思われる配列の例です。場所は空撮のため正確にはわかりませんが,バンコク西部の近郊です。蛇行する本流河川に向かって網状に支川が合流しています。一部人工的な水路も見られますが,それも自然の蛇行を示しています。図の上部(おそらく北で上流)は水浸しの状態ですが,これは,手前側の海岸側が浜堤で,上部は後背湿地になっているのかもしれません。春山成子(2009)※による,タイダルフラットと,ラグーンもしくは泥洲に分類されているところです。
 農地は,網状の水系に逆らうことなく,一見無秩序ですが自然な形で区画されているようにみえます。

図2.タイ南部の灌漑施設周辺の水系と農地
 図2は,伝統的な配列と近代的な計画農地の配列とが混在している例です(Google Earthより)。場所はタイ南部(タイ湾側)の伝統的な古都,ナコーンシータマラートの南東東30㎞ほどのところです。
 ここは近年,King Project と呼ばれる灌漑事業が行われています。これによって大規模な水田が作られています。周辺の田圃の区画と明瞭な違いがみられます。たとえば,伝統的な地域では少し短冊形で,方向も微妙に異なりますが,土地改良区では正方形に近く,方向も均一です。さらに,旧水田の広さはさまざまですが,新水田では極めて狭く同等に統一されています。
これは,水の管理をしやすくするとともに,事業後,土地を等価交換しやすいようにしたためだと思われます。
 さらに,この周辺ではホワイトタイガーの養殖が行われていまして,地形とマングローブ林の環境とエビ養殖の関係とが興味深いのですが,はここでは省略します。


図3.バンコク近郊の農地と新興住宅と水路
  図3は,バンコク近郊の代表的な農地と新興住宅の配列です(Google Earthより)。この図は,個人的にたいへん興味がそそられます。
 自然に近い河川と人工的な運河の利用の違いが見られ,運河沿いの農地はたいへん細長い形をしています。一方,新興住宅はその農地を買い取って開発されるため,同様に細長くなり,空中写真でみますと,まるで百軒長屋のような形状を呈しています。また,住宅は連続して配列しているのではなく,中に1枚の田圃を残しているようです。これはもちろん水管理や防災のためだと思いますが,図らずも(図ってかもしれませんが),景観をはじめ,住環境にすばらしいことだと思いました。
 また,ほとんどの主な運河の横には,近年整備されたと思われる幹線道路が建設されています。多くの場合,幹線道路の運河側は旧集落であり,新住宅は外側に建設されています。エリア的には道路一本離れているだけなんですが,なにぶん道幅が広く,地区共同体として共存できるのか,少し疑問を感じました。以前も運河で隔てられていたはずですが,各家庭は小舟を所有していて行き来には何の不便もなく,何より景観(この場合は固有文化・経済)が連続しているため,運河を挟んで一つの共同体だったことは当然です。私たちのような行き掛けの観光者ではよくわかりませんが,これから,バンコク郊外の集落が水路と道路をどのように利用し,どう変化していくのかを考えるうえで,一つの起点としての観察を行うことができました。

 最後に前回紹介しましたダムヌンサドゥアクの事例も取り上げたかったのですが,図は前回示しましたので省略します。今回の紹介は以上です。(River)

※.春山成子(2009)「東南アジアの自然環境の基礎」:春山成子・藤巻正己・野間晴雄編朝倉世界地理講座3東南ジア朝倉書店,451Ppp.3-11

2011年9月24日土曜日

海外巡検 in タイ


 前記事の夏合宿のようすを見まして,それに参加できなかった悔しさもあり,代わりにと言ってはなんですが,タイ巡検のようすを一部ですが報告しておきます。(今回の巡検には3名の地理研部員が参加しました。)

 海外巡検は3度目の参加でしたが,一昨年のアドリア海諸国では石灰岩地形と地中海気候を,昨年の韓国では大陸の花崗岩地形と冷帯大陸性湿潤気候を,今年はチャオプラヤー川のデルタ地形とサバナ気候を体験することができ,それぞれ刺激的な印象をうけました。

 さて,なにをテーマに報告するかですが,個人的にまとめた報告書の進捗状況から,もっとも観光的な水上マーケットをとりあげてみます。
 図1.水上マーケットのようす(1)            図2.水上マーケットのようす(2)

 図1,2は,ダムヌンサドゥアクという,バンコクからおよそ80㎞ほどのところにある郡?にある水上マーケットのようすです。
 
図3.ダムヌンサドゥアクの位置


 図3のように,ダムヌンサドゥアクは,メークロン川河口から20㎞ほど内陸ですが,標高は海抜6~7mで,町の中を網状に水路がめぐらされています(図4)。

メインとなるダムヌンサドゥアク運河は,バンコクから当地域まで一直線に続く幹線水路で,これは,ラーマ4世の時代に,バンコク湾沿岸の灌漑を目的に掘られたようです(1866-1872年)。もちろん水運にも利用されていたはずです。






図4.ダムヌンサドゥアクの水路網

 その後,各地域ごとに支川網が掘られたと考えられますが,現在,ダムヌンサドゥアクで伝統的な水上マーケットを見ることができます。これは観光目的でとくに整備されたものですが,なぜ当地がとくに選ばれたのかが疑問として残ります。推定ですが,ダムヌンサドゥアクは,バンコクからメークロン川までの運河の終(起)点としての機能があり,とくに水路網が発達していたからではないかと考えています。

図5.交通手段としての水運

 現在,水路の利用が減少していることはもちろんですが,観光目的以外に,まだ生活の一部として利用されています。たとえば,本来の目的であるバナナ,ヤシ類,マンゴーなどの灌漑水路としてのほかに,水上マーケットでの主婦の買い物(図5)や,ココヤシの出荷(図6),漁労(図7),洗い物用の中水としての利用などが観察できました。
 しかし,Google Earthで見ると,やはり道路網が整備されてきていることが明らかで,家が水路に面していても,裏手には車道がひかれていることが多いようです。まもなく,人々の生活から水路は離れていくと考えられます。

図6.ココヤシの集積・荷出し場

 周辺の標高は海抜数mあるとしても,運河の水面からはゼロメートル地帯に近いため,運河の自然環境の変化が直接周辺の土壌環境に影響を与えることが懸念され,人々の目が水路から少しでも離れることが心配です。
 まだまだ先の話のようでも,私たちの国がたどってきた水環境の歴史変化もあっという間のできごとでしたので,気になりました。
 近年の観光には,そのような変化をチェックする役割も期待されていると思います。大切に育ててほしいと思いました。

図7.水路での漁労のようす

 ダムヌンサドゥアクは,水上マーケットを素材にした地形,地質,土壌,気候,植生,農業などに関連する地理的テーマが考えられ,興味の尽きない一級の観光地でした。
                      (River)



2011年9月19日月曜日

夏合宿の終了と後期の授業の開始

sagara1020です。

2011年8月9日から12日までの3泊4日で夏合宿に行ってきました。
合宿地は、春合宿と同様の和歌山県田辺市です。
地理研の合宿では例年、テーマごとに班を決め個人、またはグループで調査を行います。
今年は、海岸班、山地班、市街地班の3構成です。
海岸班は、港や防災について調査。
山地班は、耕作放棄地、熊野古道、高尾山などについて調査。
市街地班は、城下町、鉄道、ニュータウンについて調査。

このようにわけ田辺市を調査しました。


田辺市の概要については、以下のサイトをご覧ください。
http://www.city.tanabe.lg.jp/subindex/outline.html

 3泊4日すべてが調査というわけではなく、1日目はレクレーションをかねてはじめて田辺市を訪れる1回生のために田辺市観光をしました。

訪れた場所は以前このブログで紹介した。天神崎、扇ケ浜、闘鶏神社です。
闘鶏神社では、神官をされている方が奈良大学のOBさんで丁寧に説明をしていただきました。
まさか、奈良大OBと出会うとは、、、、。
地理研の合宿地が田辺市に決まったの神の仕業かもしれないなと思いました。

闘鶏神社で話を聞く部員たち

また、地理研の先輩達も差し入れにきてくださいました。
良き先輩達に後輩一同は、感謝の気持ちでいっぱいです。

このあと、扇が浜、天神崎とまわり、子どものようにはしゃいだあと、ホテルへと帰り休みました。
翌日からは、テーマごとに個人、グループ調査を最終日まで行い奈良へと帰りました。

 なにかを見る部員、T君

 天神崎ではしゃぐ部員達の中でもくもくと調査する部員、J君

はしゃぐ3回生

ひかえめな2回生

1回生とその後ろにいる人

 目的地に下から行く部員と上から行く部員


  はしゃぐ部員達 




田辺市役所をはじめとして、今回の合宿では様々な方のお世話になりました。

田辺市の方々は、明るい方が多く。ヒアリングにも丁寧に応えていただきました。
本当に感謝しております。



奈良大学では、後期がはじまりました。学祭も近いです。学術サークルとして結果を残せる数少ない機会ですのでしっかりと結果を残したいです。
後期も気を抜かないようにがんばります。