今回の日本地理学会秋季大会では,興味深い発表を2本聞くことができました。
1つは,プレート境界型地震の捉え方についてです。昨年の太平洋沖地震の見方が,ややもすると地球物理的なプレート運動に視点が集中しすぎていて,地形学的な視点が欠けているのではないかという指摘だったと思います。指摘されてみれば全くその通りで,今回の東北地方太平洋沖地震の研究発表やマスコミ報道では,プレートの跳ね上がりがどうしたとか,アスペリティがどうのとかといった,地球内部の内容に偏っていたかもしれません。海底断層の発見報道はありましたが,今回の震災では津波の被害が大きく地震の揺れによる被害が小さかったからでしょうか,私自身,関心は海水を持ち上げる巨大な作用力に向いてしまっていたかもしれません。これまでも海底地形には注意してきたつもりでしたが,海水を取っ払った,海底と陸地とを連続させた地形の変動(断層)として見ることも可能なのかもしれないと思いました。
ただ,近代科学がこれまで経験したことのない今回の巨大地震では,比較的新しい学問である地球物理学からの研究が急展開することは当然で,そこに注目が集まるのは,それが社会から求められている結果だと思います。
2つめは,ジオパークの実践と課題についてです。ジオパークは新しい観光形態ですが,それにしても,まだその定義は定まりません。近年,毎回のようにシンポジウムが組まれていますが,そのたびに微妙に異なります。今回は各地の学芸員の方たちが発表されましたが,さすがに永くエコツーリズムの実務に携われてこられた経験から,理想と現実とのギャップをどのように埋めてきたのか,また,新しい試みであるジオパークの課題について発表されていました。
これに関連して,私もエコツーリズムについてはそれなりに調べていたつもりでしたが,不覚にもエコミューゼについての検証が足りなかったことを自覚できました。箱物の博物館を脱し地域ぐるみで取り組むエコミューゼですが,地域と研究者との協働による運営の中で,専門性の担保をどう図るのかということを過小評価していました。また,エコミューゼにしてもジオツーリズムにしても究極は地域づくりであり,将来どのような地域でありたいのかという哲学を築くことがもっとも大切であるというコメントに勇気づけられました。地理学には,哲学に正面から取り組むことを社会から求められていると思います。
(River)
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